- お知らせ
「第41回日本毒性病理学会学術集会」における第一三共株式会社との共同研究成果発表のお知らせ
2025年1月30日(木)〜1月31日(金)、静岡県で開催された「第41回日本毒性病理学会学術集会」において、第一三共株式会社と進めてきた共同研究「Artificial intelligenceを用いたラット腎臓における糸球体※1および尿細管※2の病理組織学的病変の安全性評価」が採択され、ポスター発表を実施しましたのでお知らせいたします。
本研究は第一三共株式会社とエルピクセル株式会社が2022年より取り組んできた包括提携による成果の一つです。医薬品開発の前臨床試験のうち安全性評価で行われる病理学的検査は、ヒトによる顕微鏡観察であるために多大な時間と労力を要します。今回、全身諸臓器・組織の中でその組織構造が最も複雑である腎臓について、エルピクセル独自の画像解析アルゴリズムにより、「尿細管病変」に加え「糸球体病変」の異常の検出とともに正常組織からの逸脱度合いの可視化を実現しました。
※1 糸球体:腎臓の組織構造の一つであり、細い毛細血管が毛糸の球のように丸まって、そこにはフィルター機能を有する足細胞、毛細血管の間を埋めるメサンギウム細胞で構成されており、血液中の老廃物などをろ過して尿として体外に排出する機能があります。
※2 尿細管:糸球体と腎盂をつなぐ管であり、糸球体から排出された尿から体に必要な成分を再吸収して血液中にもどし、不要な成分を尿として排出する役割をしています。
【学会基本情報】
学会名:第41回日本毒性病理学会総会及び学術集会
公式HP:https://cfmeeting.com/jstp41/index.html
会期:2025年1月30日(木)~1月31日(金)
会場:三島市民文化会館ゆうゆうホール(静岡県三島市)
要旨集:https://www.japantoxpath.org/ja/event/jstp41_abstract.pdf
【ポスター発表情報】
セッション:ポスター発表14 その他区分5
日時:第2日目 1月31日(金) 14:45 – 15:45
会場:ポスター会場3(市民ロビー)
演題番号:P-72
演題:Artificial intelligenceを用いたラット腎臓における糸球体および尿細管の病理組織学的病変の安全性評価
◯甲斐 清徳1)、石田 留美子1)、本室 美貴子2)、河合 宏紀2)、今岡 尚子1)、土屋 由美1)
1)第一三共株式会社 安全性研究所、2)エルピクセル株式会社
概要:
医薬品開発の前臨床試験のうち安全性評価等で行われる病理学的検査は毒性試験における検査の中でも時間がかかり、通常、毒性試験の最終段階である実験動物を解剖してから始まり、研究開発で律速になることが多く、その効率化及び迅速な評価が必要とされます。
その病理検査では、パソロジストによる顕微鏡観察で行われますが、薬物を投与しい対症動物の組織構造の正常範囲を把握し、薬物を投与した動物の組織の異常との違いを判別するスクリーニングだけでも多大な時間と労力を要することが課題の一つであり、AI技術の活用による効率化が期待されています。これまで毒性病理の検査でAIの活用事例はありますが、創薬モダリティーの多様化により、これまで経験してこなかった病変に遭遇する機会が増えています。これまでのAIモデルのように既知病変を教師データとして学習させたAIモデルでは実運用に制限がかかること(病変の見落とし)が懸念されています。
本研究では、エルピクセルの画像解析AI技術を活用し、毒性試験で評価する臓器のうち、複雑な組織構造を有する腎臓の正常組織を教師データとして学習させ、そこからの逸脱を検出するAIモデルを構築しました。これによって、尿細管病変に加え糸球体病変の異常を検出するとともに、正常組織からの逸脱度合いの可視化を実現しました。
図1. 弱拡大で判る尿細管の異常を検出するモデルと糸球体の異常を検出するモデルを組み合わせたAIによる標本の正常・異常判定。
(1)腎臓全体の組織構造を予測し、正常構造からの逸脱度合いから尿細管の異常を判定(細胞密度の低下や組織構造が乱れなどを「異常」と判定)
(2)糸球体を個別に検出し、正常・異常を判定
図2.尿細管異常の判定。正常構造からの逸脱度合いを定量することによって尿細管の正常/異常が判定可能であった。
図3.糸球体の正常/異常の判定。評価用データの糸球体異常は5段階評価のうち最も変化が軽微なgrade1の病変であったが、正常データのみを学習に使用したモデルで、上記の精度での分類が可能であった。
【第一三共株式会社とエルピクセルの包括提携について】
エルピクセル株式会社は第一三共株式会社に対し、研究領域のみならず開発・製造を含むAI画像解析技術の活用が期待される全てのバリューチェーンを対象として、2022年より包括的に技術支援を行っています。これにより、第一三共社内での潜在的なDXニーズを顕在化させ、新規モダリティの活用による革新的医薬品の創出に向けた様々な業務プロセスの変革と加速化を支援しています。
※2022年7月20日 第一三共株式会社によるプレスリリース「画像AI解析に関するエルピクセル社との共同研究成果及び今後の展開(包括提携契約締結)について」
URL:https://www.daiichisankyo.co.jp/files/news/pressrelease/pdf/202207/20220720_J2.pdf
【エルピクセル株式会社について】
エルピクセル株式会社は、ライフサイエンス領域の画像解析に強みを持ち、医療・製薬・農業分野において画像解析技術、とりわけ人工知能技術を応用することで、高精度のソフトウエアを開発してまいりました。医師の診断を支援するAI画像診断支援技術「EIRL(エイル)」、創薬に特化した画像解析AI「IMACEL(イマセル)」を軸に事業を展開しています。
コーポレートサイト:https://lpixel.net/
公式ブログ(Note):https://note.com/lpixel/
【お知らせに関するお問い合わせ】
エルピクセル株式会社 広報担当
TEL:03-6259-1713 Email:pr@lpixel.net